日本電信電話株式会社(NTT)は、重度身体障がい者のコミュニケーションと社会参画の実現を目指し、メタバースへの操作命令につなげる入力インタフェースを開発したと発表しました。これにより、重度身体障がい者が脳信号入力や視線入力に加えて、表面筋電信号入力を利用できるようになることが期待されます。
この新技術は、重度身体障がい者が残存するわずかな筋肉の動きをメタバースへの操作命令に変換するもので、NTTR&Dフォーラム2023 IOWN ACCERALATIONで展示される予定です。
現状、重度身体障がい者は24時間の介護が必要で、自宅や施設など限られた空間で生活することが一般的です。外部との交流や社会参画を望むものの、コミュニケーションやICT機器の操作が大きな障壁となっています。そこでNTTは、重度身体障がい者が豊かなコミュニケーションや社会とのつながりを実現できる技術の開発を進めてきました。
具体的には、筋肉の萎縮を引き起こす疾患と共生する重度身体障がい者の方々の身体運動が大きく制限されることから、脳波センサや視線入力技術が主に研究されてきました。しかし、NTTはこれまであまり注目されてこなかった筋電センサに着目し、わずかな筋肉の動きをメタバースへの操作命令に変換する新たな身体拡張技術を開発しました。
この新技術を用いると、たとえ筋肉がわずかにしか動かなくても、筋電センサにより筋電位を計測できます。また、筋疲労を考慮し、筋を長時間収縮させ続けることなく、意図した操作命令を実現できるように設計されています。
新技術の具体的な応用例として、アバターによるDJパフォーマンスとゲーム操作が挙げられます。前者では、ALS共生者が視線入力によりアバターを操作し、DJパフォーマンスを披露するシステムを実現しました。また、ゲーム操作では、筋電入力によりゲーム内キャラクターの操作を可能にしました。
NTTは、2024年度には、この技術を障がいの程度に合わせて改善し、さらに多様なコミュニケーション表現に発展させることを目指しています。これにより、メタバース空間やロボットを介したリアル空間で、重度身体障がい者が自然なコミュニケーションを行うことが可能となり、社会参画の実現に寄与することが期待されます。